栗原市被災地支援プロジェクト医療ワーキンググループに係る支援
栗原市に、東日本大震災により大きな被災を受けた県内自治体への支援を目的に、被災地支援プロジェクト本部が設置されました。それに伴い、栗原市病院事業では、避難所への医療等支援を行うための病院事業管理者の諮問機関として、栗原市被災地支援プロジェクト医療ワーキンググループを設置(平成23年3月28日)しました。
避難所の医療支援体制については、栗原市医師会、栗原市歯科医師会、栗原市薬剤師会、県立循環器呼吸器病センターなどの関係機関と市民生活部、栗原市病院事業が一体となった取組みを行いま した。その活動の一つとして、当院の精神科医療チームが、全避難所を巡回しました。
東日本大震災の栗原市民の避難所における精神状態のアンケート調査結果(速報)
~平成23年3月13日午後の自覚症状に基づくもの~
栗原市立栗原中央病院 精神科医師 三由幸治
精神保健福祉士 長峯深雪
- 調査対象人数 310名
- 調査項目と自覚症状を有する割合(パーセント)
- 睡眠障害 28.1%
- 食欲不振 6.8%
- 不安・いらいら感 17.1%
- 抑うつ気分 8.4%
- 疲れやすさ 25.8%
- 結果および考察
- 震災2日後においてすでに多数が精神不調を自覚している。
- 自覚的抑うつ気分は8.4%とすでに多くの市民が訴えている。当然避難所生活が長期化すれば、さらに増加する。
- 精神科ケアを必要な市民に提供できるようにすることが必要である。
南三陸町から平成23年4月3日より栗原市の避難所に入所した南三陸町民の精神状態のアンケート調査結果(速報)
~平成23年4月8日から12日の自覚症状に基づく調査~
栗原市立栗原中央病院 精神科医師 三由幸治
精神保健福祉士 長峯深雪
- 調査対象人数 44名
- 調査項目と自覚症状を有する割合(パーセント)
- 睡眠障害 20.5%
- 食欲不振 6.8%
- 不安・いらいら感 20.5%
- 抑うつ気分 25.0%
- 疲れやすさ 25.0%
- 結果および考察
- 全体的に精神不調の自覚者は多く、我々が3月13日の栗原市民の避難所で行った同項目のアンケートと比較しても、精神不調の自覚者の割合はより高く、特に抑うつ気分の自覚者の急増が目立った。
- 今後も精神科ケアは必要であるが、特に抑うつ状態への対応が自殺予防などの観点から重要であろう。
南三陸町の栗原市への避難者の避難入所当初と入所約1か月後の自覚的精神症状の比較
~平成23年4月8日から12日の自覚症状に基づく調査~
栗原市立栗原中央病院 精神科医師 三由幸治
精神保健福祉士 長峯深雪
- 方法
入所当初は4月8,9,11,12,13日に44人にアンケート
入所約1か月後は4月25,27日、5月9,11日に28人にアンケート
- 結果
入所当初 入所約1か月後- 睡眠障害 20.5% 7.1%
- 食欲不振 6.8% 10.7%
- 不安・いらいら感 20.5% 46.4%
- 抑うつ気分 25.0% 3.6%
- 疲れやすさ 25.0% 3.6%
- 考察
不眠、抑うつ気分、易疲労感の3項目については避難所で落ち着いた環境の提供を受けたことと、避難者によっては、精神科治療を受けて精神症状の自覚者が減ったと考えられる。不安・いらいら感は入所後の相談でも多くみられた、「子供の教育、食事」、「他の家族との被災状況の違いからくる不公平感」、「いつ仮設住宅に入居できるか」等、現実的な問題に向き合うことが多くなり増加したと考えられる。入所1か月後以降のアンケートは実施できなかったが、現実的な問題が次第に解決に向かっているため、不安・いらいら感もその後は減少していくと推測される。
新潟大学、宮城県立循環器呼吸器病センター、当院のチームで市内各避難所においてエコノミークラス症候群検診を行いました。(2011年4月12日)
長引く避難所生活により深部静脈血栓が形成されるリスクが高まります。静脈血栓により引き起こされる肺栓塞の予防が目的です。
下肢静脈エコー、弾性ストッキング着用指導を行いました。